アニメーション作画スタジオ:スタジオ・ライブ

第一回作画談義 その3

:なんか全然道をそらすことなんて私もうできないのに、こんなに何にも考えてなくていいのかすごい不安になってきた。

石井:いや、でもうちも全然何にも考えてないですよ。それこそ、とりあえず入ってやりたいってことだけだったんで。絵とかもそんなに上手くもないし、どこまでできるか分かんないけど入りたいみたいな感じで一応入ってるんで。

:じゃあアニメーターになってからあんなに画力って上がったんですか?石井さんの場合は。

石井:いや・・・でも、ちょっとずつ上がってる、感じなのか・・・。でも入りたてなんて爪よりもちっちゃい人間かけなかったですもん。でもそれでも爪よりもちっちゃい人間描かなきゃいけないこともあるじゃないですか。レイアウト的に。あんなもん動かせるかよ、みたいな状態で。それで動画とか割って、原画がきれいでも中割がぐにゃぐにゃになっちゃってすごい悔しくって。んで描けない描けないっていう感じのとか・・・とにかく描けないのすごい多かったですけど。最近やっとちょっと増えてきたかな、みたいなところがあるんで。

:あー、じゃあ何も考えずにやってればいいんですかねー。

石井:うちなんて東京もんで、しかも次女だし、親とかも全然許してくれる環境だったりもするので、だいぶゆるい状態で入ってて。で、あんまり自分の先のことも考えずにゆるゆるやってる。で、ナウ。

:ナウ(笑)わたしもナウです(笑)

吉田:あんまり考えても仕方がないよね。入ったときに芦田さんに言われて、いまではなかなかそういかなくなってしまったところはあるけど、生き残りたいんだったらひとより15分長く毎日働きなさいよっていうようなことを言われて。そのあいだの積み重ねでどんどん数が伸びていくからって。そういう気持ちでやっていくってところが・・・

石井:15分早く!(笑)

:でもね、私家でホモの絵描きながら、これかいてる時間を仕事してたらどんだけできるんだろうなって。

吉田:でも、ターボエネルギーの元だからね(笑)

神志那:そうそう

石井:充電じゃないですか、結局。

吉田:それがもとでゴム巻いて、会社に来たらでバーンって(笑)

:でもなんかさぁ、わたしぶっちゃけ家で絵かいてる時間のほうが会社で仕事してる倍ぐらい描いてるんですよ。

佐野:まじで!

神志那:それ見せろよ(笑)

:やだよ、やですよ、だって全員裸ですよ!やだやだやだ!まじやだ!

佐野:それ金にしていったほうがいいよ。

吉田:いや、でもね、金にし始めたらライブやめると思うから、金にしないほうがいいよ。

:そう思いますでしょ!

佐野:そっちのほうが儲かるんだったらそれでいいじゃん(笑)

吉田:え、いいのかなー

佐野:いいんじゃないすか

:えー、でも私動かすのが好きなんですよ。アニメーターの仕事として

佐野:ホモも?

:んー、まあホモでもいいわ!違う違う!

佐野:家でもホモを動かしてるんですか?

:ホモは動かしてないよ、ホモっぽい絵を描いてるだけ、ってちょっと録ってるので!

吉田:いまさらいまさら(笑)

:違う違う、だけどアニメーターの仕事で楽しいって感じるのは、なんか動かしてるぜ!っていう部分で・・・

神志那:あ~、素晴らしいな。

:なんか絵の一枚一枚のクオリティはあんまよく分かってなくて、ここも動くぜあそこも動くぜが楽しいけど、家帰ってからはなんかすげーホモかけたみたいな(笑) のにこだわって描くから・・・よく、何言ってんだかわかんない(笑)酔っ払っちゃったよ。

佐野:でもちょっと共感するって言うか、なんか動かすのって大変じゃん、いっぱい絵描かなきゃいけないから。それがすごいしんどかったりするけど。その動かす楽しさみたいなのが分かると、それがいい感じに快感になると、まあいいかなというか。要するに俺とかは全然スポーツできないけど、紙の上ならそれができるっていうのが。紙上だったらブルース・リーとかスティーブン・セガールとかできるっていうのがアニメーターの楽しいところで。あとアニメーターってなんでもできるじゃん。実写の世界とかでは照明とかやっぱり背景とかもいるし、あと美術とかカメラマンとか色々分かれてるけどアニメーターは基本的にそれ全部自分でできるのが、他の映画の業界で働いてる人よりは特なのかなって気がするけど。

:全部の役職やってるようなもんだもんね、そのカット内では。

吉田:だからセガールにはなれないけど、気分は分かっといたほうがいいよね。身体動かす気分みたなのがあると、急に原画描きやすくなるっていうか。

:なんか動かした後みたいな気分になったりしますよね。書き終わった後に。

石井:それは渚さん身体も動いてるんじゃないですか(笑)
:動いてるかもしれない(笑)

吉田:やっぱり不思議なのがアクションかいてるときは正中線で重心を取ってまっすぐ座って描いてないことがおおいね。右に傾いたり左に傾いたり。なんかアクションの気分に合わせて身体も動いてる、みたいな。

佐野:やっぱり、どうしても動きの流れがわかんないときに自分でやりますよね。普通に。こうかな、こうかな、みたいな。

石井:絶対描いてるときの顔とか、見られたくないですもんね(笑)

佐野:それけっこうどの職種でもありますよね。絵描きあるあるみたいなので、怒ってるときはほんとに怒ってる顔して描いてたりとか。

吉田:でも、それはアニメーターじゃなくて絵描きだったらあるけれど、アニメーターの場合は身体動かすって言うね。身体のアクションでそのまま描くっていうのがやっぱりあるから。あの、気分を育てるってのも必要だと思う。

佐野:必要ですよ。アクションカットとか持つ前に、やたらとアクション映画を見まくりますよ。

:ホント~、偉いね。

佐野:偉いっていうか気持ちを盛り上げるために、遊びみたいな(感覚で)

吉田:あと、子供じゃないけど、ナルト見た後にナルトの忍者走りするとか。ああいう気分って言うのがアニメーターには大事だよね。中学生ながらそういうことしてしまうっていうのは、アニメーターに将来なるんだったら無駄ではないと思うね。クラスメイトから冷たい目で見られても、「(はじめの)一歩」見た後にパンチの真似してみるとかね。鏡に映して。しかもスローで見せても仕方ないのにスローで動いてしまうとか。そういうのって、結構アニメーターの素養だと思う。

:「一歩」のパンチのエフェクトの動きが全然分かんないですよね。何回見てもわかんない。

佐野:あー、あれね。俺も何回か真似しようとして失敗したことあるけど。

石井:あ、でもそれすごい大変なことだと思いますよ。真似しようとして失敗することって。自分が見たイメージの中のあのカッコイイやつってやっぱどうしても描けないんですよね。イメージだけだと。ああいう風にやりたい!ってやってもフィルムになるとあっ・・・て(笑)

吉田:でもね、やっぱりね、「一歩」の中でもかっこいい動き、エフェクトみたいなやつのヒエラルキーみたいなのがあってね。あの第一期の「一歩」で言うとハヤミのショットガンを出す話数でね、一話だけ小池さんがやってるのね。ものすごいカッコイイの。かわす動きも出す動きも、しかも二人のボクサーがボクシングしてるのね。で、ステップも使ってて。ステップでインして下からパンチがいい角度で入ってくの字に曲がるとかいうタイミングがすごい気持ちよくて。あれを見てね、「一歩」やってる作監さんたちは分からないけど、俺たち原画マンはぎゃーっ!てなって。いきなり正解見せられたみたいになって。で、追っかけるんだけど全然追いつかないっていう。

石井:作監とかやらせてもらってると、いろんな人のやつを見るじゃないですか。やっぱ、なんだろ、特殊能力持ってる人がいるじゃないですか(笑)そういうのを見ちゃうと、すごい悔しいけど、でも楽しいんですよね。むしろ修正入れていいのかな~とか思いながら顔をもうちょっと好みにしちゃおう、みたいな(笑)でも悔しがるのは必要だけど、比べすぎちゃうのはいけないと思う。絶対にこの能力では、今の自分だったら勝てないってのが分かるときってあるじゃないですか。すごく、まざまざと。だからといって、それを育てるのを全くやめるってことは(別に)なくて。で(一方で)長所の部分を伸ばしていって。

吉田:やー、でも追いつけない領域あるよね。

石井:いや、おいつけないですよ。そこは特殊能力だから、そこを目指してもその人になれるわけでは決してないので。その人のいいところはうらやましいなぁ、うらやましいなぁと思いながら違うところも伸ばしていくみたいな感じで。でも、その伸ばしていく先にもすごい人がいて、こう・・・あぁー!(怒)みたいな(笑)

:面白い(笑)でも石井さんには変に他の作監さんの意識しすぎて石井さんの特色をなくさないでほしいと思うんですよね~。

石井:いや、でも特色とかわかんないですからね(笑)

:自分のことってわかんないですよね。私は、石井さんは独特のセンスというか、人の絵を崩さないまま自分の絵を入れてくるんで。私ね、やっぱ作監さんって絵がすごく上手いだけじゃ全然成り立たなくて、どんだけれレイアウト戻りとして戻ってきたときに原画さんのモチベーション下げないかっていうのも・・・(笑)

石井:(笑)

佐野:それはね、難しいよ。だってね・・・原画マンにテンション下げられることのほうが多いから(笑)

:でもそれがね、石井さんめちゃめちゃうまい気がして。石井さんって魅力を加えつつ相手の絵を崩さないから。

吉田:でも、ひとつ大事なことがあって、アニメーターになるんだったら作監さんと同じスタジオにいたほうがいい。だって石井さんを知ってるから修正がすごく受け入れられるわけで、知らないところからくる絵よりは、石井さんはこういう気分で入れたんだなとかってのはよく分かるし。

:あー、そっか!知ってますもんね。人をね。

佐野:それは双方向そうかもしれないですね。

吉田:そうだよね。渚さんがこうやって動かしてきてるから、じゃあこういう風に絵入れようとかあるから。だから、作監さんも原画さんもひとつのスタジオにいるスタジオに入るほうが絵描きとしては幸せなんじゃないかなと思う。

石井:そう、だから渚さんのこととか知ってるから、「あ、じゃあここはもう渚さんに任しちゃえばいいや」みたいな感じで(笑)

:いやー(笑)、もうほんとすいませんね。色々苦労をかけてしまって・・・。

佐野:やっぱあれですよね。やっぱ集団作業だからある程度信頼関係があったほうがスムーズだよなって思いましたね。

神志那:ライブのよさはそこなんだよ。ひとつの集団として作監から原画までいるから。

佐野:顔が見えない人たちの絵に修正入れるってのは、もしかしたら向こうは一生懸命頑張って描いてるかもしれないけど、それが伝わんなかったりとか、そういうところで変にストレス感じちゃったりとか。でも、今のアニメの作り方って、割とそういうほうが多くなってる気がするっていうか。

吉田:牙(KIBA)っていう昔やってた作品で、竹内京子ちゃんが韓国のDRMOVIEさんとやってて。京子ちゃんが作監でDRMOVIEさんが原画っていう班でやってたのね。で、京子ちゃんがハングルの文字を100円ショップで買ってきて、ハングルで指示入れ始めたのね。「ありがとうございます」とか「ここよくできています」とか。ずっと書いてて。でもなかなかリアクションがなくって。でもDR班の最後の話数のときに、原画さんが日本語で「ちょっといろいろと上手くできなくてすいません。最後の回は本気出しますのでよろしくお願いします」って書いてあって、急に上がりがよくなってきて。

:なんか感動しちゃう!

吉田:でもこれはオチがあって、「なんだ、できんじゃん」って京子ちゃんが。「最初っからやってよ」ってのがあったんだけど(笑)ただ、最後だけでもやってくれたのは京子ちゃんがずっとそれやってたから。コミュニケーションとろうとしてたからっていうのがあるなぁって。

【続く・・・】

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