アニメーション作画スタジオ:スタジオ・ライブ

第一回作画談義 その1

この会話で出てくる人たちの紹介

神志那弘志:スタジオ・ライブ社長。司会進行。

吉田大輔:中堅アニメーター。最近では演出方面で活躍中。

石井舞:入社10年。主にライブのグロス回で作画監督を担当。

佐野誉幸:入社8年目。最近はアクション作監なども担当。

渚三歩:入社4年目。もうさすがに新人面は出来ないお年頃。

稲垣宏:入社4年目、渚と同期。ホームページ作成担当。


神志那:司会進行の神志那です。テーマはアニメーターにとって必要なこと、資質、または資質じゃなくてもアニメーターになるために準備しておいたほうがいいよ、と思う事に関して話していければなあと思うんですよ。

:私が聴きたいです(笑)

稲垣:そうだよね(笑)

石井:でも、それこそ、渚さんとかの場合とか結構いろいろと変化球で入ってきてるじゃないですか。

:ああ、入ってきてる経緯とかですか?

神志那:じゃあそれ聴こう!まず、どういう風にしてスタジオライブに入ってきたか。

:えー!私、だって職歴が半端ないからあれじゃないですか!

神志那:職歴言わなくていいよ。ようは、アニメーターを目指すためにこう来てこう来て、ライブに入ったって言う(説明を)。

:アニメーターになりたくて入った会社で、面接してアニメーターやりたいって言ったら、制作進行になったんですよ。まず。制作進行さんが二人やめちゃったばっかりの会社だったんで。で、2年間ぐらい制作進行してたら・・・

神志那:アニメーターやらされずに・・・

:そうそう、そしたらちょうど蒼天航路で芦田さん(スタジオライブ前社長・故人)にあったんですよ。

神志那:制作進行としてね

:そうそう、制作進行として。で、その時のマッドのプロデューサーさんが「お前、演出家目指すのか、プロデューサー目指すのかどっち?」って言われたんで、「アニメーターに後々なっていこうと思ってます」って言ったら、「あれお前30越えてなかったっけ」って慌てられて、それで芦田さんがすぐ入れって言ってそこから週に一回ぐらいで課題持ってきてくれて、アフレコのときに課題見せたりとか、次ダビングのときに課題もらったりとか。

神志那:すげえ、芦田さんじきじきに教えてもらってたわけだ。

:直々に(笑)そうそう。

佐野:でも、今大事な話だったと思うんですよ。アニメーターになりたいって言ったときに、30越えてなかったっけって言われたって言ったじゃないですか。アニメーターになるのに年齢制限ていうか、何歳越えたらだめとかあるのか、とか。

:なんか体力勝負らしいから早くにアニメーターになってから(できる仕事量を増やさないと)、あとは衰える一方だよ、みたいになっちゃって・・・。

稲垣:まあ、前職にもよるんじゃないですかね。ある程度絵を仕事にしてた人ならまだしも、全く関係ない状態からアニメーターになるって言うと結構年齢気にする人もいるのかな、と思うんですけどね。

石井:あと、伸び幅ってのも会社的にはあるのかもしれないですけどね。入った時点の絵から伸びるかどうかっていうなのと、若い人のほうが伸びるっていうのはあるかもしれないですけど。やっぱり。前に30越えた方とかもライブに入ってきたりとかしましたけど。

吉田:でも、なんだったけ、考え方で、始めてからの10年が伸びるっていう言い方がなんかあるみたいで、それっていいなと思って。だから、いくつからとかじゃなくて、やって、それで気がつくことっていうのは最初の10年が多いって言う。そういう考え方があるっていうから。

:私なんだかんだで4年目なんですよね・・・。

吉田:うわぁ、早え!もう半分だよ、折り返し地点だよ(笑)

神志那:もう4年目?まる3年すぎたってことかい?

稲垣:丁度4年間はいたことになるんじゃないですかね。

神志那:この春でまる4年いたってこと?じゃあ佐野はもう6年ぐらい・・・・?

佐野:いやもっとじゃないですかね。俺20で入って今年28になるから、もう8年やってることになりますね。

神志那:え、8年!長いな!

:すごーい!そんな若いのに8年やってるなんてすごいっすね!

神志那:え、じゃあ石井は何年やってるの?

石井:多分、9年か10年、みたいな。

神志那:じゃあ吉田は・・・

吉田:もう、やになりますよ(笑)18年っす。

石井:この業界入ると分かんなくなっちゃいますよね(笑)

吉田:この前吉松(孝博・ライブクリエイター)さんのHPのサムシネで、アニメーター歴30周年記念ってやってましたから。

石井・渚:すごい!(笑)

石井:それこそ、うち30なんで。だから、吉松さんの歴と石井誕生は同じですよ。ミンキーモモのスペシャルのやつで、吉松さんが描いてたって聞いたことあるので。それをちっちゃいとき観てたりとかしてましたから。

吉田:でもなんか、全然長くやってる感じってないですよね。なんか入った当時は何年できるんだろうって。3日やったら3ヶ月できる、3ヶ月できる人は3年できる、3年できる人はずっとできるみたいな言い方があった気がするけれど・・・なんかもう、何も覚えていないっていうか(笑)

石井:あんま気にせず、というか気づいたらこんぐらいやってる、ぐらいな状態なんで。

神志那:まあ、雇う側からすると、もし合わなかったら…、ねえ、違う道に進むべきじゃない?それが取り返しのつかない年齢ってあるわけだよね。30から入ってきて5年やって、そこで君、無理だわってなったら・・・(笑)再就職がきかない年齢になる可能性があるから。そういう意味での、早く挑戦してねっていうのはあるよね。雇う側からしたら。

:あ、そういう意味か。

吉田:でも渚さんは仕事どんどん覚えていくほうだからいいよね。あの人のこと、どうしたらいいんだろう、見たいな感じじゃないし(笑)

石井:渚さんのやつはみててこう来るか!みたいな楽しさがありますよね(笑)

:まじですか~!何してるか自分でよく分かってないんですよね・・・。

吉田:えー!4年目なのに~、とかいって(笑)

:もう何も考えてないんだよなぁ~って・・・

石井:渚さんとかは結構変化球で来てるような気がするのであれかも知れないですけど・・・

神志那:めずらしいパターンだよね。

石井:自分とかは普通にちっちゃいころ子供としてアニメを見てて、それで小学校の高学年のころに転校して来た子が結構そっち系に詳しいというかちょっとオタク気質な子だったんで、その子の影響ですごい目覚めた感じで。で、丁度小学校6年生ぐらいのときに、ばんばんアニメを見始めて。中学生になったときに出てるアニメ雑誌をばーっと買うぐらいの勢いで。お小遣い全部使ってアニメディア・アニメージュ・ニュータイプ・・・みたいな。それでプラスアルファ、アニメ雑誌っぽいものを買ってたり。それこそジャンプとかガンガン、小コミ・・・あと、小学校の中盤ぐらいのときにりぼんとなかよしを両方買ってた時期があったりとか。:結局アニメとか漫画大好きっていう感じにどんどんすすんでっちゃったんですよ。

:絵は描いてました?もう。

石井:そうですね、でも絵はもともと、小学校のときはキャラクターが描けなくって動物ずっとかいてたんですよ。絵が好きではあったんで、動物とか背景・・・じゃなくて風景画とかみたいなやつは描いてて。で、その転校して来た友達が、絵上手いんですよ。キャラクターがかわいいんですよ。で、いいなぁと思って、自分で描いてもやっぱりかけないというか。だからずっとそれこそリスとか恐竜とか描いてたような人間だったんで。描けなくって、ちょっとがんばり始めてやってたんですけど・・・。

:でも、よく今ぐらいかわいくキャラクター描けるようになりましたね。苦手だったのに。

石井:その時、アニメ系の絵とかをすきだから、ひそかに見て描いて、でも友達には見せられないなっていう時期が結構あって。一時期絵を模写してたんですよ。アニメ雑誌をめっちゃかってたので、気に入った絵を。作品好きじゃなくても絵は好きってことはあったりはしたんで。でも結局友達はオリジナルで絵をかけるのに自分は模写しかできなっいって言うのが結構コンプレックスがあって。だから、友達同士で絵描いて交換会、みたいのをするんですけど、自分はあのシーンのあのカットのあの絵はかけるんだけど、それから動かせないっていう。それこそ子供の模写なのでレベルは全然低いんですけど、アニメの絵の模写なので友達からはうまいねとか言われるんだけど、いや、上手いんじゃなくて模写してんだから元の絵(が上手いから)じゃんって思ってたんですけど。
で、ちょっとずつオリジナルとか。それこそ、同人とか見たいな絵をかける人が元々いるじゃないですか。あっちの絵もちょっとあこがれ始めて。だから、模写っぽい絵に自分の絵を似せてくみたいな人たちの絵がうらやましくて。で、自分っぽく描くように頑張ってとかやってるうちのやつが中学校のときだったんですよ。

:えー、早いっすね!

神志那:早い。

石井:で、中学校の2年の後半とか3年の頭ぐらいに進路相談とかあるじゃないですか。その時に担任の先生に将来どうなりたいのとかいわれたときに、三者面談ですから、母親が隣にいるところで「いや、アニメとかちょっと描いてみたいです」ということを。

:親は反対とかしなかったですか?

石井:いや、ちっちゃいころから絵ばっかり描いてるので、お小遣いすべてをアニメ雑誌につぎ込んでるような子供だったんで、それはもう反対する余地も無く、むしろうちの親は結構フリーダム?な感じだったので。

神志那:漫画家にって言うのは無かったの?もう完全にアニメのほうだったの?

石井:オリジナルの絵がかけないって言うのがあるというか、なんて言えばいいんだろ、漫画も描きたかったです。でも、うちはコマ割してああいうのの絵で描くって言うのが自分でやっても描けないっていうか、分からない。ストーリーを作ることができないのでそれよりは表情を描いてたほうが楽しいというのがすごくあったんで。それでどっちかっていうと小さいころから観て好きだし、しかもあとその頃90年代ぐらいのアニメ、(制作工程が)デジタル(化)になるちょっと前とかのアニメを小学校のときとかバーっと見てたので、作監(作画監督)ごとに絵が違うみたいなことを中学校ぐらいの段階でその時はなんとなく分かってたんですよ。逆に高校ぐらいになったときはできなくなっちゃってたんですけど、ちょっと一時(アニメから)離れてた時期があったんで。でも中学校のときに作監ごとに顔が違うってのが分かって、こういうのを描く職業になりたいってのがあったんで、高校は美術の専攻があるところとかに入ったりとかして。でも美術の専門高校ってわけじゃなくて高校の中にある美術が一日に一回ぐらい入ってくるぐらいの専攻のコースだったんですけど。そうするとむちゃくちゃ絵が上手い人が一杯いるんですよ。

神志那:いるねー。

石井:で、そういう絵が上手い人の中でちょっとかなり劣等感はあったんですけど。それこそ漫画部とかでもめっちゃ絵が上手い人とかが一杯いて。

:天才みたいな人いるもんなぁ~。

佐野:高校で絵上手い人はすでにめっちゃ上手いですよね。

石井:めっちゃ上手いですよ。

佐野:いま石井さんの話聞いて思い出したのが、俺も高校の面談のときにこの先どうすんのみたいなこと言われて、まあ、アニメやるかどうかってのはまだ微妙だったんですけど、なんか絵を描く仕事をやりたいって言うんでアニメのをやりたいっていったときに先生に理解無かったりすると結構もどかしい思いをする人もいるんじゃないかもしれないけど・・・。

石井:先生はどうだったんですか?

佐野:なんか、理解がないっていうかよく分かんないみたいに言われて。俺はその時専門学校の東映アニメーション研究所ってところに行きたくってそこのキャラクターデザイン科に行きたいんですって言ったら、キャラクターデザインの仕事が分からないって言われて。それ説明したからって分かるの?この人みたいな感じになるじゃないですか。だから今高校生の人がこれをみて、そういう人たちもいるかもしれないけど、そういう社会の無理解にもめげずに頑張ってほしいなぁということを思い出しましたね。

石井:でも今時の先生とか親とかってどうなんですかね。理解度的にはだいぶ上がってる気がするんですけど。それこそ吉田さんの頃とかは親の理解はどうでした?

吉田:やっぱり分かんないんじゃないのかな。だって接しないでしょ、こういう職業の人と。どうやって、どういう収入があって、どういう気持ちで生きてるかとかって。あと、映画祭とかで地元の山口に帰って学校とかいくと、「何やってるんですか」みたいな。CGですか?CGで作ってるんですか?とか言われちゃうし。やっぱり何も理解がすすんでないなぁと。仕事でスタジオ入って、右見ても左見てもみんなアニメの人だからみんな分かってる気がするし、東京にはアニメ会社がいっぱいあるからそういう人が一杯いるという気でいるかも知れないけど、総人口からすればアニメ業界の人はすごく少数派で。打ち上げで中野とかにいっても何やってるんですか?って聞かれてアニメ作ってるんです、って答えたら「へー、すごい!どうやって作ってるんですか~?」とか聞かれちゃうし。

石井:やっぱりまずどうやって作ってるんですかってところから始まったりとかするから、アニメのほうを目指す人はまずどういう感じで作ってるのかっていうところからちゃんと調べたりとかした方が。漫画家になりたかったら漫画家(になればいい)って分かりやすいじゃないですか。ただアニメ系の仕事したいっていうならアニメのどの部署に入りたいのかっていうのが。絵描きたいならアニメーターって道もあるけど、それ以外の仕事の就き方ってのもあるじゃないですか。なんだろ、うちすごく悩んだのが、周りに絵が上手い人が多かったので、やっぱり絵かけないなっていうところもすごく大きかったんですよ。自分は画力が全然足りてないしプロとして仕事できるのかなっていうところもすごくあったりしたんですけど。でも、漫画家だったら売れないと稼げないだろうしアシスタントとかになるだろうけど、変な話アニメーターだったら動画一枚いくらだからちゃんと動画あげてれば一ヶ月は暮らせるお金は収入としてできるんだろうなってことを高校3年ぐらいのときに漠然と思ってたので、それだったら変な話、好きなことして暮らしくんだったら、生きてくことはできるだろうなぁと。

吉田:でも動画がいくらとかってのは雑誌に載ってたの?

石井:いや、細かいとかは載ってないし分かんなかったですけど。

佐野:職業体系としてそういう形になってるから安心っていう。

石井:そう、なんとなくそういうことも分かってたというか、自分もどういう風に情報を仕入れてたのか分からないですけど。なんか好き過ぎてやってると分かることってあるじゃないですか。そっちの業界ずっと眺めてると。中にいる人からすれば全然素人考えなんだろうけど、なんとなく分かるというか。それこそ、あげた数で食べていけるっていうことは死なないな、という認識があったんで、それだったら一回そっちの方向はいりたいなっていう気持ちもあったんで。で、東映の研究所に入ってたら芦田先生がいてっていう。

:東映に芦田さんがいたんですか?講師として?

佐野:芦田さんが僕の代、東映研究所の10期生の代までは。何やってたんだっけな、キャラクターデザインの・・・。でもキャラクターデザインのことも教えてくれたけど、基本的にはやっぱり原画・レイアウトの描き方とか割と即戦力になるために。

石井:そうですね、基本的にはパースをすごく教えてましたね。だから、キャラクターデザインするじゃないですか。で、紙に一体絵を描くじゃないですか。その時に足の立ち方をすごい注意されましたね。それこそキャラ表とかで一体絵を描くけど、この足だと地面に立ってないよね、とかまず言われて。

:あー、なんかいってたなぁ。

石井:いまなんか渚さん渋い顔を(笑)だいぶ注意されましたね。それ多分(笑)

:んー、なんか言ってた気がすんなぁ・・・とか、でも覚えてない・・・酔ってなかったのにね(笑)

石井:だからキャラクターデザインがどうのっていうよりも基礎的なパースの技術をたいぶ教えてくれてたかんじなところがあって。

佐野:でもパース大事ですよね。パース大事って言うか、さっきの石井さんの話聞いてて思ったのが、周りの人たちがめっちゃ絵が上手かったみたいなのとか、今も例えばpixivとか、あとは普通のイラストレーターとか、そういう人たちの絵の上手さっていうのとアニメーターとしての上手さとして求められてる部分ってまたちょっと違うようなところがあるんじゃないかって気がしてて。やっぱりパースっていう絶対的なルールがあるんだっていうのが、アニメーターの絵としての最低条件というかき本的な考えだと思うんですよ。イラストレーターはパースとか無くてもね。ワンピースの尾田さんもいってたけどパースとかよりも雰囲気のほうが大事みたいなことをいってるけど、アニメーターでそれ言ってたらちょっと仕事になんないじゃないですか。

吉田:現場の人だ(笑)

佐野:いや、俺もパースのことホントにいまだに分かんないこととか、やってて頭こんがらがることがすごく多くて、多分これ一生付き合っていかなきゃいけないんだろうなって思うんですけどね。

石井:うちも、しょっちゅうやっちゃったなっていう・・・(笑)

神志那:それは入ってから気づいてることでしょ。

石井:そうですそうです。だからこれ見てる人はパースの勉強は始めるなら早いに越したこと無いというか。なんていうんですかね、アニメーターって所に終点を最初っからつけてるんだったら、基礎的な部分としてあったら便利だなぁと。

吉田:でもどっちだろうね。パースってロジックだけど、線をきちんと引けるっていうのはトレーニングというか筋力のほう。

:え、どういうことですか?筋力って・・・。

吉田:なんだろう、このカーブならシュッて引けるとか、強い線がずーっとながい時間、10時間ひけるとか、そういうものっていうのはやっぱりどれだけ線を引くかっていう訓練だと思うんだけど。それが一杯でれば、あとはパースに当てはめるだけで、一杯絵を描いていきゃそのうちパースにはのってくる。だけど、パースから入っちゃうと硬くなっちゃうんだよね。

石井:年齢にもよると思うんですけど、今から中学生高校生ぐらいの子達がずっとパースパースっていってると間違った方向に行っちゃうのかなって思うし、それぐらいの年齢だったら自由に描いて、どっちかというと想像力とかレイアウト力とか、表情つけたりとかってことのほうを鍛えていって、それこそ20代の会社はいるぐらいのときからパースをしっかりできるような感じにどんどん進んでいくっていう。

神志那:でも、俺結果論だけど、俺はインテリア科ってところにいたんですよ。工業高校の。インテリア科はパースを学ぶんです。図面引かなきゃいけないから。それを三面図にしてそれに色塗るっていう作業が。結果的に言うと、それは役に立ってる。要はこの業界に入ってからパースを学ぶ必要がなかったから。こまかいところはね。大まかなパースってのがどういうものかは知ってるから。で、知ってて損はないと思うのね。それとまたさっき言ってたのは別なんだよね。やっぱり感覚的に磨くものと、ロジックというか技術的に磨くものはまた別で、要は建築家と芸術家というか。例えば、ここは悲しいイメージで絵を作ってくれっていったときの、その悲しいイメージをどう表現するかっていうのも、感覚じゃん。そこは技術で教えられるものじゃないから。いかに色んな本を読んだり、絵を見たり、映画観たりっていうところで自分が受けたものをどう反映していくか。っていうのが必要なのと、もうひとつはさっき言ったパース。建築的な、ロジックとしての技術的なところを学ぶ。その両方。言ってしまえばその両方持たないと、この業界では長く生きていけないだろうなぁ、っていうのが。総合的にいくとね。いや、両方兼ね備えている人ってなかなかいないんだよね。結局人間の性格っていうのは、どっちかにだいたいかたよってる。

吉田:僕は完璧感情のほうから入っていますね。

:あー、でも吉田さんすぐ分かる。

吉田:イメージをどうやって膨らませて、どうやって人のイメージと掛け合わせて、または対抗してもうひとつ上のイメージに行くかって言うところに興味がある。それ自体がものつくるって言うことなのかなと思ったのが10代のころからの。そうやって、まだみたことのないものが出来上がっていくことのが面白いと思って、で、物作りたいというふうに思ったので。

:でも私も純粋美術の学科だったのでもろそっちのほうですよ。

神志那:まあ、渚みてて分かるよ。もう絶対感覚でものを描いてるだろうなぁと(笑)

:でも私も吉田さんの修正見てても、ああ、感情丸出しだなとか思いながら、でもテンションが高いんでいつも楽しいんですよ。でも、私的にはもうちょっとかっこよく計画的な何かを持ち出したいんですけど。

吉田:でも、なんか俺は小学校の頃から変わらないのがあって、イメージが先にあってそこのゴールに辿り着くためのロジックがあるていう考え方をしてる。

神志那:どっちから入るかはその人次第だと思う。俺、だから渚のよさを殺したくないのは、できるだけ感情で描いてほしいと思ってるから。ロジックから描こうとすると絵がすんごいね、ちっちゃくなる。つまんない絵になっちゃう。

:そうなんですよね~、なんかうまく行かないんですよね。両立しないというか。

吉田:だから合わないんだと思うよ。

佐野:俺も完全に感情で描いてましたけど。でも、俺がさっきパース勉強したほうがいいよって言ったのは、俺がそうじゃなくって結構そこで苦労したから絶対そこは先にやっといたほうがいいんじゃないと思ったから。

石井:それこそ一番最初の段階で苦労したこととかは今回のテーマにあってるんじゃないですか。
だから、一番最初に苦労したのは何ですか?渚さんとかは。

:え、私?え、ちょ、私・・・?

神志那:何も考えてなーい(笑)!

(一同笑)

:なんか苦労したっけな・・・。いや、なんか苦労はしてるんですけどね・・・。

稲垣:毎回不平は言いまくってるけどね(笑)

:そうそうそう、なんか不平言うからあんま残らないんですよね。その場で不平不満を全部言って、あー仕事終わってよかったって思ってるんであんま・・・そうそう、残らないのが問題で覚えてないんですよねー。

神志那:それはそれで問題があるな(笑)

石井:でも変な話、発散する能力は必要じゃないですか。

吉田:うんうん、溜め込んだらつらいよね。

石井:どんなに絵が上手くても精神的に疲れちゃうとやっぱ身体に出ちゃったりとかして仕事できなくなっちゃったりとかするので。でもそれって鍛えるのって大変ですよね・・・。

吉田:いや、そんなことないんじゃない。やっぱり遊ぶ方法をさがすっていうのが。

:やっぱ遊び大事ですよね~。

佐野:でもさあ、やっぱり絵が好きで入ってくると、それまでは絵が発散の方法だったのにそれでどんどん追い詰められるみたいなことになっていくから、俺結構入ってからしばらく苦しい時期が長かった気がする。

吉田:え、発散覚えるのに何年かかったの?

佐野:いや、それは具体的にいつからってことは分かんないけど、結構あれですよ、くすぶってるというか、ほんとなんか・・・

:なんか好きな絵を描いたらいいんじゃないですか?

佐野:いや、もう絵も描きたくないって言うか…。

吉田:いや、もう絵は無理でしょ~。つらいよ~。

佐野:紙とか鉛筆とかみたくないみたいな。俺は結構そういうのは映画とか観まくるようになってから(発散されるようになった)ってのもあるかもしれないな。異常な量を観始めたりとかして。

吉田:すっごい行き詰ったときに雑草を抜かなきゃいけいないことになって、雑草を抜いてたら結構よかったことがあるな(笑)二日ぐらいたったらまた雑草が生えてきてさ。「雑草つええなぁ~、こいつすげえ戦略持ってるな・・・」とかそんなこと考えてると、結構気がまぎれる。

佐野:アニメーターのイメージってなんか修行僧みたいに、苦行のように全ての欲を封印してただひたすら机に向かってもくもくと原画を描きまくるみたいなイメージがあるかもしれないけど、多分それだけだと身にならないものもあるっていうか。適度に外に出て、吸収してるものもあって。なんかインプットとアウトプットがあって始めて成立するものがあるっていうか。

吉田:佐野君、若干前提間違えてるよ。だって修行僧って言ったけどさ、なんか俺らの仕事って全体として煩悩の塊じゃん。

石井:煩悩の塊(笑)たしかに(笑)

:でもみんなってストレス発散方法って何してるんですか?映画だよね?(佐野にむかって)

佐野:映画とかライブとか・・・。

石井:うちもライブとか・・・。

神志那:大体共通してんじゃない?絵じゃないよな。あ、絵描いてるよね?(渚に向かって)

吉田:あ、すげえ~。

:うん、ホモの絵かいてます。

吉田:(笑)いやもう、なんかね。救いようがない感じがすごいよね。

:そうでしょ!(笑)もう私突き詰めようと思って。救えない感じを。

吉田:え、思ってないでしょ?そうなっちゃうだけでしょ?つきつめようと「思う」っていったけど意志はないでしょ?

:・・・うん。意志はない。

(一同笑)

:でも早く家帰ってホモの絵描きたいって。

(一同笑)

吉田:エネルギーの塊だもんね。

石井:でもホント渚さんはエネルギーの塊ですごいいいなとおもって。

:そんなことないですよ!だって私仕事量とか結構調節しますもん。ホモの絵描くために(笑)

石井:いや、ちゃんとそこで調節できてるのがえらいって言うか・・・。

神志那:うん。

石井:なんだろ、目的といろんなやんなきゃいけないことのバランスをちゃんと自分でとれるじゃないですか。

:えー、でも私後ろめたさで一杯ですよ(笑)

佐野:だからさ、ホモの絵描くのにホモのアニメ描けばいいじゃない。

石井:え、でもそれとこれはおんなじなんですか?違うんですか?

:んー、分かんないです。やったことないんだもん。やったらすごいはまるのかもしれないけど。んー、でもやってみたいかと言われるとそうでもないかな・・・。

吉田:やっぱり料理は1コだとつまらないよね。色んな料理を食わないと。

【続く・・・】

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